研究概要 |
今年度は、歴史変化とDynamic Usage-Based Model(DUBモデル)との接点に関するケーススタディとして、従来検討してきたhave構文の歴史的発達と共時的多義についてまとめたものを、単著『英語構文のカテゴリー形成』の第7章として結実させた。ここではhave構文の多義性のカテゴリーについての検討を行った。元来<所有>を表す動詞haveが<使役>と<受動>の意味の混在する構文へと拡張を見せる過程について、歴史コーパスなどのデータを一部利用して明らかにした。また、その他の類似の使役構文(make, let+原形、cause, bring+to不定詞など)との関わりにも目を向け、補文形式の違いと、形式の違いが概念・経験上の違いを表すとするiconicityの問題について、DUBモデルでの包括的な説明を目指した。 また、もう一つのケーススタディとして、stand/sit/lieやgo/come+-ing/-edを用いた、いわゆる<自動詞+分詞・形容詞>という形式をとる文に焦点をあてた。この文形式がとった歴史的発達のプロセスと、主体化現象(実際には客観的移動が認められない場面状況に対して、話者が移動動詞を用い、視線の移動やメンタルイメージ上での移動などを主体的に重ね合わせるという現象)との関わりが見られるものへと順次拡張発達をみせるということを、小論を月刊『言語』に発表、及び投稿中であるが大阪外国語大学言語社会学会発行の『EX ORIENTE』にまとめた。
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