研究概要 |
今年度は、縦軸としての相続をめぐる法的規制と、横軸となる結婚に関する法的規制(とりわけ亡妻の姉妹もしくは亡夫の兄弟との結婚を禁じる法律、相続の規定に関する法律)をより精密に整理し直したうえで、当研究の核となる、センセーション・ノヴェリストを扱った章を、「従兄妹」をキーワードとして、完成させた。より具体的には 1.9月24日〜10月3日まで、ロンドンのブリティッシュ・ライブラリで、主に19世紀イングランドにおける相続関連の一次資料を収集した。 2.サセックス大学のLindsay Smith教授と、センセーション・ノヴェルにおける男性像の変遷について意見交換をおこなった。 3.M.E.BraddonのLady Audley's Secretを、従来のような家父長社会における女性の狂気という視点からではなく、Lady Audleyの狂気の物語のカウンタープロットとして、相続の放棄と従兄妹間の結婚の物語に着目する新たな視点から分析をおこなった。 4.Wilkie CollinsのThe Woman in White, Armadale, The Law and the Ladyの主に3作を、相続と結婚を軸として、identityの偽装、illegitimacyという視点から分析することにより、男女間の力関係の表象をめぐるCollinsのイデオロギーをあぶり出し、そのうえで、センセーショナリズムという要素の低いと見られるThe Moonsoneを再度検討し、実はCollinsにお馴染みのテーマをふんだんに隠し持つこのテクストの意外な、そして過度なセンセーショナル性を明らかにした。
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