(1)デジタル化した談話資料(音源)を元に音響的分析をおこない、波形・ピッチ・フォルマントなどを抽出した。これらを元に、能格性(自動詞主語と目的語の類似性)が文アクセントにも反映しているかどうか調査を行った。その結果、文アクセント位置と、新情報を伴った自動詞主語の意味役割の間に深いつながりがあることが示され、過去の理論的先行研究を実証的調査によって補完することが出来た。さらに、語彙的に行為者的主語を取るような自動詞においても、話し手の事態の捉え方によっては、被行為者を取る自動詞と同じような使われ方をすることが判明した。能格性の存在は、事態の捉え方が統語構造に反映し、音韻構造で実現するという理論体系と矛盾せず、他の現象(句と複合語との対立)とも類似性が見いだされることがわかった。 (2)上の成果を英文論文としてまとめ、投稿する準備がほぼ完了した。ネイティブスピーカーによる文体チェックを経た上で、査読を前提とした公表に向けて最終作業を行う。 (3)外国出張(カリフォルニア大学サンタバーバラ校言語学科)によって、新たな未公開談話資料を収集することが出来た。さらに、入手した音源を文字化することが出来た。これらは、今後まとめて資料として公開する予定である。また、同大のWallace Chafe名誉教授と研究上の交流を行い、本研究に関して貴重な助言を受けることが出来た。 (4)入手した新たな資料と既存の資料との比較検討を通して、新しいテーマを追求する複数の方向性が見えてきた。これらは、次年度以降に集中して研究を継続していく。
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