研究概要 |
フランス近代の詩人・思想家ポール・ヴァレリー(1871〜1945)が『カイエ』や『固定観念』のなかで編み出した「錯綜体」の概念と、数学者リーマンや物理学者アインシュタインを中心とする同時代の科学思想との影響関係を研究している。夏季休暇を利用して主にフランス国立図書館で資料収集を行い、ヴァレリーの幾何学関連草稿や、空間論・宇宙論に関連した手稿などを筆写した。またリーマンやアインシュタインの著作や論文を閲覧、購入した。日本においても同様に、入手しうる日本語、フランス語の関連資料を購入した。 以上のような調査の成果をまとめ、2002年9月22日より25日まで韓国ソウルのシュンギュンクワン大学で開催された国際ヴァレリー学会"Image, Imagination, Imaginaire autour de Paul Valery"(ポール・ヴァレリーを巡るイメージ、想像力、想像界)において、Valery et la limite de l'intuition spatiale(ヴァレリーと空間的直感の限界)の題目で口頭発表した。これは、ヴァレリーの空間論の変遷と、「錯綜体」の起源について、電磁気論における「場」の理論、リーマンの「N次元多様体」モデル、アインシュタインの特殊相対性理論との影響関係を明らかにしたものである。この学会発表については学会時に要旨を纏めた冊子が作成配布されたが、2003年中に改めてフランスの出版杜(未定)から公刊される予定である。 なお、2002年9月末に来日したパリ・ソルボンヌ大学ミッシェル・ジャルティ教授から、ヴァレリーの思想に関し、貴重な情報を頂いた。2002年度にはその他にも、ヴァレリーに関係した数篇の論文を、主に慶應義塾大学の『日吉紀要フランス語フランス文学』を中心に発表した。
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