ドイツ・モデルネにおける舞踏と文学の関係、とくに舞踏の側から見た「身体」と「ことば」との関係を考察する本研究は、昨年度までにフランク・ティース、ルドルフ・レメル、フリッツ・ベーメの舞踏評論の分析、ルードルフ・フォン・ラーバン、メアリー・ヴィグマンの舞踏思想の分析を終えている。今年度はこれらの分析の成果を論文としてまとめることにつとめた。 今年度前半は上記の論文を執筆しつつ、ヴァルター・ベンヤミンにおける「言語」と「身振り」に関する二次文献、ベンヤミンと関わりのあった哲学者ルートヴィヒ・クラーゲスや教育学者グスタフ・ヴィネケンら世紀転換期の改革運動(モダンダンス運動を含む)の資料を収集した。 今年度後半は前半に収集した資料をもとに、ラーバンの舞踏思想とベンヤミンの言語思想とを「言語」と「身振り」の観点から比較分析した。彼らの思想の背景として各種改革運動(芸術家コロニー、田園都市運動、田園教育舎運動、青年運動など)に注目し、これらの運動が同時代の人々の動的な言語意識や言語イメージと同じ底流をもち、舞踏の想像力・想像力にも直接つながるものであることを確認した。さらにこれらの運動に身を投じた人々のなかに、ダイナミズムへの欲求がナチズムを支持する立場へと無自覚に変容していくいくつかの契機を探り当てた。これらの成果を踏まえた論文を書くことも予定していたが、体調を崩したために十分な研究成果をあげることができなかった。この点に関しては今後の課題としたい。
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