研究概要 |
本研究の目的は、中国の甘粛省臨夏回族自治州積石山保安族東郷族撤拉族自治県大河家鎮甘河灘村、大〓村、高李村等に居住している保安族16,505人(2000年)が話しているモンゴル系の言語、保安語積石山方言を危機言語の観点からフィールド調査を行ったうえで、その調査結果を公刊することにある。この保安語積石山方言は、村の名前にしたがい甘河灘保安語、大〓保安語、高李保安語という下位方言に分けられるが、言語資料が乏しいことに加え、近年若年層を中心に漢語化が著しい。そのため、遅かれ早かれ消滅の可能性がある言語として、今、詳細な調査が求められている。 本年度は、新たに収集した資料とこれまでに収集しておきながら未整理であった資料にしたがい、次の4つのことをおこなった。 1.「大〓保安語の言語資料」の公刊。大〓保安語の基礎語彙850語と基礎会話を収めている。 2.「高李保安語の現状」の報告。これまで誰も調査しておらず、状況がまったくわからなかった高李保安語の現状を整理し、平成15年度日本モンゴル学会秋季大会において報告した。 3.「保安族の老爺から採集した話-現代化したトリガガ-」の公刊。採集した保安族の代表的な民話「トリガガ」が、従来知られている「トリガガ」からどのように変容しているのかを論じた。 4.「保安族を訪ねて」の連載。現地調査からわかったことを一般向けに書いたものである。
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