研究概要 |
初年度の研究計画に沿って,単語親密度データベース(天野・近藤,1999)から単語群をふるいわける作業を進めるとともに,STRAIGHT(河原,1996)によるF0再合成手法の検討を行った.また,知覚実験の手法を吟味するために,抑揚模倣発話(reiterantspeech)による予備実験を行った.単語親密度=5以上の複合語で,アクセント位置があいまいになる可能性のあるもの約30語を録音し,F0再合成によって様々なピッチパターンを与えることで約200種類の刺激を作成した.被験者はそれらの刺激の抑揚だけを真似て,音節はすべて「ま」に置き換える形で発音を行った.刺激の作成や実験の遂行にあたって,科学研究費によって購入した機材が有効に用いられた.実験の結果は現在取りまとめ中である. 一方,機能負担量の計算については,研究発表の項に記述した「日本語音韻論における機能負担量と韻律の関係」において,簡単な計算モデルを提案した.これは従来の方法(Hockett,1967)が,語彙全体の機能負担量を計算した上でないと求められない非現実的なものであったのに対し,近傍単語活性化モデル(Luce,1986)の計算方法を拡張した現実的なものである.次年度はこの計算モデルをもとに実験計画を立案し,上記の実験方法の検討による知見も生かして効率よく研究を進めていきたい.
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