研究概要 |
第2年度は、単語親密度データベース(天野・近藤,1999)から3モーラの名詞単語についてネイバーフッド(ある単語と1音素だけ異なる単語の集合)の算出を行った。ネイバーフッド集合サイズの大小、ターゲット単語とネイバー単語の親密度を統制し、発話速度を3段階に、S/N比を3段階に変化させた音声刺激を作成し、予備的な知覚実験を行った。被験者の課題は音声刺激を聞いて、単語を仮名あるいは漢字で書くことであり、被験者数は15名であった。刺激の作成や実験の遂行にあたって、科学研究費によって購入した機材が有効に用いられた。実験の結果からネイバーフッド集合のサイズ、ターゲット単語の親密度とネイバーフッドの親密度が有意に作用することが確かめられた。たとえば、ターゲット単語が『訓話(親密度=2.938)」と低親密度であり、そのネイバーとして「緩和(親密度=4.812)」という高親密度単語が存在する場合、聞き取り誤りは大きくなる。このような母音の変換(u<->a)だけでなく、子音の変換によるターゲットとネイバーフッドの関係も刺激の中に含まれており、それらについては、ノイズや発話速度の影響がより大きくなった。たとえば摩擦音や破裂音はノイズの中では極めて識別が難しくなる。 これらの結果に基づき、長さを限定せずすべての単語にネイバーフッドの算出を行うと同時に、各音素の機能負担量の計算を進めている。発話速度やノイズによって被験者のパフォーマンスを適切に統制できることが分かったので、研究計画にしたがってさらに実験を行っていきたい。
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