研究概要 |
1.日本語話者,フランス語話者,計約20名の被験者にそれぞれ日本語,フランス語の2カ国語で発話させた音声を長時間スペクトル分析し,各言語に含まれる周波数成分を個人内で比較した.日本語,フランス語の含有周波数成分には大きな違いはないものの,日本語と比較してフランス語の方が2000Hz以上の成分が多く認められた.さらに,同被験者らの聴覚検査を行い,先の平均スペクトルと比較検討,聴覚と発話に認められる周波数帯域の関連性を検討した結果,8000Hzの聴覚損失と発話スペクトルとに相関性が認められた. 2.脳磁場測定装置(Vector View)を用いてMMNを指標とした実験を行った.MMNとは0.5秒程度の短い一定の提示間隔で同じ聴覚刺激を標準刺激として繰り返し提示する中に15%以下のまれな割合で逸脱刺激を挿入すると特異的に出現する脳磁場反応である.本研究は、日本語には弁別素として存在するが,フランス語に存在しない長母音,短母音を含む無意味語を刺激とし,日本語話者,フランス語話者,計20名程度の被験者からMMNを記録中し,現在分析中である.すでに日本語話者と英語話者(米国人)では同無意味語に対する反応潜時が異なることを見出している.英語,日本語,フランス語における音声体系の相違が,音声処理に及ぼす影響を解明する鍵となり得る.
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