本研究の目的は、日本とイギリスで活躍した陶芸家、バーナード・リーチ(1887-1979)の生涯と作品を対象とした、総合的な基礎研究を世に示すことである。この目的のために、(1)関連資料の蒐集と関係者へのインタビューを行い、伝記的研究を進めることと、(2)日英両国に散在する彼の作品を目録化し、作品論を行うための基礎データを整備することを目指した。 研究計画に従い、平成16年度も日英両国に散在する関係資料の調査、蒐集を行った。特に、日本民藝館において、同館の協力のもと、関係資料の調査を継続できたこと、及びイギリスのクラフツ・スタディ・センターが公開をはじめた資料を利用できるようになったことは、有意義であった。さらに今年度は、この3年間に得た資料や情報の整理を本格化させた。お茶の水女子大学の大学院生等に謝金を支払い、カセットテープの書き起こし、各種資料の電子データ化、資料のファイル化を行った。 前年度同様、今年度も研究発表の機会に恵まれた。7月には香港の香港理工大学で開催された国際比較文学会(ICLA)にて、英語で研究成果を発表した。また、国際日本文化研究センターでの共同研究会や、デザイン史フォーラム編の書籍『アーツ・アンド・クラフツと日本』(思文閣出版、2004年、113-125頁)などでも論文を発表できた。 3年間を通じて、少なからぬ資料を蒐集できたことは有意義であった。ただし、収集資料が多岐にわたり、すべての資料の分析を終了するには至らなかったことは、反省点である。しかし、リーチ芸術の特質、彼という存在が日本で果たした政治的役割、彼が英語圏に伝えた日本(の地方)文化観など、彼の生涯を考える際の視点や見通しをいくつか手に入れられたことは、本研究の成果であった。
|