1.前年度のオーストラリア調査をもとに以下の研究発表/報告を行い、伝統的世界観と近代的芸術観の「著作権」解釈と作品評価基準を比較考察。これは「先住民」と呼ばれる人々の現代社会における矛盾を抱えたポジション自体を問う作業でもあった。文学・文化研究を社会学的知見と連携させることの重要性を痛感。 (1)「ジョン・マンディーンを探して--現代アボリジナル・アートにおける聖と俗の「知的所有権」」、於シンポ「知の共有財産・展覧会カタログの現在」東京大学大学院超域文化科学専攻・比較文学比較文化研究室主催 (2)「絵の所有者 知的財産としての現代アボリジナル絵画における「物語」の意味」『明治大学教養論集』381号 2.ポリネシア系先住民文化における英語教育/英語文学の現地調査。具体的には (1)ニュージーランドにて、オークランド大およびオークランド博物館図書館の関連論文調査、同地調査中のR.A.Sundtオレゴン大教授(南太平洋美術)との情報交換、書籍資料収集。 (2)サモアにて、サモア国立大Sina Vaai教授と面談、S.Figielらサモア人作家の現地における評価を聞き、伝統的村社会の価値観や浸透したキリスト教倫理観と表現の自由の対立の事例を知る。 (3)トンガにて、南太平洋大(USP)支部の英語による講義の参観、私立アテニシ学園Futa Helu教授と面談。以上英語及び英語文学が「小国」の社会全体にじつに多様な形で関与している実態を確認。単純な国民国家主義の礼賛も批判も、この実態の前には無意味である。拡大した英語文学が映す問題は極めて複雑だ。この複雑さを (4)「つきまとう故郷--トランス・ナショナルな英語文学とネイションの問題」『岩波講座文学13 ネイションを超えて』岩波書店(前年度末の研究実績報告提出後に共著書の一章として発表)より継続して追っていく。
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