今年度は、以下の三つの作業を行った。 第一に、フランス革命後から1901年非営利組合法までの間の中間団体に関する法制度、政策の史的把握を行った。会社法、商法学における法人論、宗教法、行政法学における公共施設、営造物理論についての文献精読を行い、19世紀末から20世紀前半にかけて、非営利組合法を契機として勃興したフランス法人論の史的前提についての理解を得た。その成果の一部を、法制史学会近畿部会(2002年9月)、民主主義科学者協会法律部会(2002年11月)において報告し、2003年刊行予定の「法の科学」に序論的な論文を執筆した。 第二に、フランス現地でのヒアリング、史料調査を2003年1〜2月の出張において行い、フランス結社法100周年関連での刊行物等も蒐集した。非営利組合法成立前の結社に対する警察の対応や結社の実態を把握することができ、とりわけ1890年代に結社観の転換と実態レベルでの結社政策の変化があったことが確認できた。このことは、立法過程だけからは、わからない社会学的事実の発見であった。 第三に、他のヨーロッパの諸国、日本の非営利組合法制の研究を行った。イギリスのチャリティー制度、NPO政策の歴史的変遷やドイツの登録非営利社団について理解を深めることができ、フランス非営利組合法の特徴点がはっきりと浮かび上がった。また日本の非営利組合法制について、とりわけ2001年に成立した中間法人法とNPO法との関係を検討し、日本の法人法制の理解に努めた。その成果として、現在、フランスの非営利組合法制を、日本の法制と比較しながら、解説する論文を執筆している。ほぼ完成しており、2003年5月には、刊行の予定である。 次年度は、これらの準備的作業を踏まえ、「フランス非営利組合法の研究-アソシアシオンの歴史法社会学」という論文の執筆作業に専念し、その完成に努める計画である。
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