平成14年度は、補助金交付予定期間(3年間)の初年度にあたり、計画通り、判決原本のデータ入力作業に従事した。 入力を終了した判決は国際日本文化研究センターのデータベースより123件の判決、大阪大学保管分より64件の判決、合計187件の判決である。この他78件の判決については、くずし文字の判読に手間取っており、現在は入力作業継続中の状態にある。合計すると、約200件強の判決原本をデータとして入力することができた。入力した判決の内容は、金銭関係の判決のうち、とくに「預ケ金」と「地所質入書入」に関する判決と破産に相当する「身代限」事件に関する判決である。 さらに今年度は、明治大学・法政大学等々においてデータ入力を終了した判決原本の内容についての口頭報告を行い、併せてそれぞれの大学で裁判関係の明治期刊行図書の調査をおこなった。また名古屋大学では司法統計データと入力した判決データの内容を比較検討する報告を行った。さらに、判決原本の内容に関わる地方資料の発掘を行った。富山県礪波市域における史料調査は実際の紛争解決の村レベルでの態様を判決原本と比較して考察する上で有意義であった。来年度以降は引き続き、以上のような裁判に関する司法統計データ、同時代の刊行物、地方史料等々をも多角的に検討しながら、判決原本データ入力を継続して行い、当時の裁判の実態解明とその後の訴訟行動に与えた影響の分析を行っていく予定である。 今年度の研究業績の一部を、平成14年6月8日に日本法社会学会(九州大学)で、さらに平成15年2月20日に鈴木正裕神戸大学名誉教授主催の研究会「司法制度史研究会」(国際高等研究所)で口頭報告した。 以上のように、本年度の主たる目的であるデータ入力作業については順調に進んでいる。
|