本研究は、法律事務員の業務「法律事務」の実態を把握したうえで、法律事務所が実効的な法的サービス提供体制を確立のための、理論的枠組を構築することを目的としている。平成14年度は、その基盤となる実態把握のための調査を中心に研究をすすめてきた。その結果、以下のような一定の成果を得ることができた。 まず実施した実態調査により総数70名の法律事務員から協力を得てインタヴュー資料を獲得することができた。しかも、このインタヴューは、広範な地域で実施することにより、多様な法律事務所の状況を把握することが可能になっている。これまで、その資料整理をすすめるとともに、その成果をふまえて、現在、法律事務の実践傾向をより包括的に捉えるための「個人-共同」「一般-裁量」の分析軸を、より詳細に実証的に検討してきた。 なお総論的な理論的枠組については、昨年末から、多数の法律事務員が参加する交流集会などの場で暫定的な研究成果の報告発表をおこなってきた。そこで聴取された現場からの意見を検討してきており、近く研究成果につき現段階での整理をおこない、「法的サービスの提供と法律事務員の活動」として発表を予定している。 他方、東京および金沢では、継続的な参与観察に基づく調査を実施しており、そのエスノグラフィを作成している。また、以上の作業を通じて、総論的な理論的枠組を機軸にした実態分析をへるなかで、派生する各論的問題が具体的にあぶりだされてきている。 以上より、実態調査による資料収集を中心にすすめることを目的とした本年度の研究計画はおおむね順調に達成でき、来年度の総合的な分析検討の準備が整ったと考える。
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