リバタリアニズムと司法制度の民営化

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14720007
• 研究機関: 立命館アジア太平洋大学
• 研究代表者: ASKEW David 立命館アジア太平洋大学, アジア太平洋学部, 助教授 (90343722)
• キーワード: リバタリアニズム / 自由至上主義 / 現代自由主義思想 / 司法制度の民営化 / 刑務所民営化論

研究概要

本研究は、現代正義論を語る上で無視することの出来ないリバタリアニズム(自由至上主義)思想を理論的に、また、具体的に検証し、その可能性を探究することを目的とする。現時点までは、リバタリアニズム陣営内における論争を要約・検証し、民営化・規制緩和などを推進する「小さな政府」論の理論的妥当性を分析するために、資料の蒐集と解読に努めてきた。また、刑務所の民営化をケース・スタディーとして取り上げ、自由主義理論が具体的にどのように生かされているのか、その有効性・問題点を明らかにするため、刑務所の民営化に間する理論的研究および実証的研究の解読にも奔走してきた。
より具体的にいえば、初年度の活動は、司法制度の民営化、中でも民間刑務所のケース・スタディーに関する文献の蒐集、解読、分析に傾斜した。研究プロジェクト全体の理論的枠組である「法と経済学」・「公共選択学派」の文献の中で、とりわけ司法制度の民営化に深くかかわるものを収集し、司法制度の民営化についての理解を深めると同時に、それに対する批判的考察を深めようとしてきた。これらの文献の多くは、実際に民間企業が刑務所経営に携わっている国々(オーストラリアやアメリカ合衆国)の研究者によるものであるため、文献を海外に発注したり、資料整理とそのデータベース化の作業を行ったりした。
文献収集に加えて、民営化の理論的可能性と現実への適用可能性とを検証しつつ、自分の考えをまとめるためにも、国外内の研究者と議論を交わしたり研究会などにも発表をしたりしてきた。
今回の研究プロジェクトの成果は、従来のものと合わせて単著の形で出す予定である(『自由・法・秩序-リバタリアニズム理論の諸相』(仮題))。なお、今年は、下記の通り、多くの研究論文を公にし、単著を一冊、共著を数冊、また翻訳を一冊出版したか、あるいは出版予定である。

研究成果

• [文献書誌] David, Askew: "Melting Pot or Homogeneity? An Examination of Theories of Modern Japanese Ethnicity"Electronic Journal of Contemporary Japanese Studies. February. (2002)
• [文献書誌] David, Askew: "The International Committee for the Nanking Safety Zone : An Introduction"Sino-Japanese Studies. vol.14. 2-24 (2002)
• [文献書誌] David, Askew: "The Nanjing Incident : Recent Research and Trends"Electronic Journal of Contemporary Japanese Studies. April. (2002)
• [文献書誌] David, Askew: "Review Article : 'Nankin Jinken' no tankyu-sono jitsuzo o motomete"Japanese Studies. vol.22, no.1. 79-82 (2002)
• [文献書誌] David, Askew: "『恐日病』と『親日主義』-戦前・戦時における言説"福岡発・アジア太平洋研究報告. 第11号. 113-123,168 (2002)
• [文献書誌] David, Askew: "Nanking 1937-38 : The Evidence from the Diary of John Rabe"Ritsumeikan Journal of Asia Pacific Studies. vol.9. 95-122 (2002)
• [文献書誌] David, Askew: "Minding Your Ps : A Theoretical Framework for Researching the International Political Economy of Human Rights"Ritsumeikan Journal of Asia Pacific Studies. vol.10. 143-157 (2002)
• [文献書誌] David, Askew: "The Birth of Kanematsu Shoten : Kanematsu Fusajiro and Early Australia-Japan Relations, 1845-1890"Ritsumeikan Journal of Asia Pacific Studies. vol.11. 1-26 (2003)
• [文献書誌] David, Askew: "Defending Nanking : An Examination of the Capital Garrison Forces"Sino-Japanese Studies. vol.15. 140-152 (2003)
• [文献書誌] David, Askew: "The Debate on the 'Japanese' Race in Imperial Japan : Displacement or Coexistence?"Japanese Review of Cultural Anthropology. vol.3. 79-96 (2003)