本年度は、本研究の研究課題の中でも、特に私が従来研究対象としている政党助成の憲法問題について、その成果をとりまとめる作業を進めた。この際に特に、伝統的に国家の構成と制限を対象としてきた憲法(学)にとって、政党という社会的存在がどのような課題を突きつけるものであったかを、今世紀初頭以来の独・日の問題状況を文脈として概観するべく試みる「序章」が付加された。ここでは、議会政の問題との関連に加え、「憲法の規範性」と「政治」の関係をどう捉えるかという問題との関連について、従来以上に問題意識を深化させることができた。この点についての更なる研究は、次年度以降の課題となる。また、政党助成問題が憲法学に対して提起する課題の困難さについて、その特質を「現状」への信頼の動揺をめぐるものとして理解する視角を、従来以上に明確化することができた。これらは、平成14年度中に、連載論文の第一回として公表されている。 またこの他、上記連載論文の第二回目、第三回目の原稿を執筆し、国家学会雑誌に提出した。帝政期ドイツからワイマール期を経て戦後へと至る、ドイツ憲法学における政党論史について、本研究では三つの系譜に分けて分析を行うが、これはそのうちの第一と第二の系譜を扱う部分に当たる。この点についての具体的成果としては、第一に「なぜ憲法学にとって政党が問題になるのか」という基本的問題について、憲法解釈論的に従来よりも精密な視角を提示することができたこと、第二に帝政期実証主義国法学と議会・政党について理解の明確化を図ることができたこと、第三にワイマール期の整理においても、ひとつの軸を提示できたことなどである。なお、これらの補正作業と掲載は平成15年度となる。この他、本研究について3月に国立国会図書館で講演を行い、有益な刺激を得ることができた。
|