本研究は、ドイツにおける政府間財政調整制度を参考にしながら、日本の地方交付税等のあり方について、憲法学的観点から考察するものである。ドイツの政府間財政調整制度の特徴的なものとして、水平方式と呼ばれる州間財政調整制度があり、この制度をめぐって、調整金を拠出する富裕な州から、これまで3回の憲法上の規範統制訴訟が提起されている。過去2回の訴訟については、すでに研究をまとめており、本年度の研究においては、1999年11月に連邦憲法裁判所で判決がだされた訴訟を中心に、論文、新聞記事等を集め、研究を進めた。この訴訟では、財政調整制度を基礎づける連邦制のあり方の問題と生存権保障の問題が憲法上の論点として挙げられたが、裁判所はむしろ、財政憲法の具体化が立法者に委任されているという点に力点をおき、一定期間内に調整の基準を明らかにするための法律を制定することを命じるにとどまっている。したがって、今後の研究としては、まず、この判決にしたがって制定されたいわゆる基準法についての研究を進める予定である。この基準法によると訴訟を提起した富裕州の拠出金はむしろ増額しているということが、すでに紹介されており、このような基準法が制定されるにいたった経緯について詳細に研究することで、先の訴訟で争われた論点について、何らかの示唆が与えられるものと思われる。 また、本年度において、従来の日本における財政調整制度についての資料を収集したもののこれについての研究はまだ進んでいない。したがって、来年度は、この研究も進めていきたいと考えている。
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