本研究課題に関する今年度の実績は、主として以下の3つに分けられる。 1.米国におけるアンチダンピング調査の研究 米国熱延鋼板アンチダンピング調査事例について、アンチダンピング研究会で2度報告を行ったほか、貿易と関税誌に研究の成果を公表した(11.研究発表を参照)。特にダンピング・マージンの算定については、調査過程に示された日本企業の主張や米国当局の決定を分析したほか、日本企業の国際法務担当者にインタビューを行い、実務に関する情報を得た。これにより、米国アンチダンピング運用の実態をある程度明らかにすることが出来た。 2.アンチダンピング運用の規制 本研究においては、アンチダンピング運用の実態を明らかにすることで、WTO(世界貿易機関)協定を通じたより実効的な規制のあり方を模索することをも目的としており、平成14年度においては、WTO新ラウンドで行われているアンチダンピング協定改正交渉を意識した研究も行った。具体的な成果として、まず、ジェトロ主催の研究会において、アンチダンピング協定改正問題について報告を行ったことが挙げられる。この報告については論文にまとめ、平成15年度8月に公表予定である。また、新ラウンドのアンチダンピング交渉における主要論点のひとつであるレッサー・デューティー・ルールについて、英文で論文を執筆した。すでにある雑誌に投稿し、平成16年以降掲載との言質を得ている。 3.海外における研究活動 ジョージタウン大学ローセンターに併設されている国際経済法研究所(Institute of International Economic Law)で一ヶ月あまりの研修を行った。研修中は、後に論文としてまとめたレッサー・デューティー・ルールについて研究し、滞在の終盤には研究報告も行い評価を得ることができた。
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