本年度は、上記研究の基礎研究として、日本の学説整理、判例研究および比較法を重点的に行った。おりから、日本国内においても、「カードリーダー事件」、「ウルトラマン事件-管轄」、「同-準拠法」、「鉄人28号事件」、「多国籍企業特許権侵害事件」、「日立職務発明事件」など、国際的な知的財産権に関する判例が相次いで下され、学界のみならず、産業界においても多大な関心を惹起し、社会問題としても大きく注目され、従来にない議論が散見せられた。議論の整理に予定以上の時間を要したものの、判例研究、比較法を通じて今後の研究に資する情報を多く得ることができた。 次に、弁理士・企業法務担当者中心の研究会および税理士・司法書士の中心の研究会においてそれぞれ報告し、本年度の課題であった実務家との情報交換も進めることができた。とりわけ、国際知的財産に関する税務については、弁理士と税理士の実務の間に埋もれた重要問題がライセンス契約において山積していることを知りえた点は貴重であった。また、その過程で、国際ライセンス契約において、国際私法的処理のなされていない点も確認した。現在、国際知的財産ライセンスにおいて、一方当事者が破産した場合の処理について別途検討している。このように、国際ライセンス契約をさまざまなし店から考察したうえ、近々いくつかの論稿にまとめる予定である。
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