これまで、外国判決に基づく強制執行の問題は、多くの場合、承認要件を中心に議論されてきたが、その原因の一つには、外国判決に基づく強制執行手続は執行国法に従い、執行国内で完結するという暗黙の了解があったことが考えられる。しかし、債務名義の範囲や、差押え禁止財産の範囲、執行に対する救済方法、執行手続における裁判所の役割など強制執行手続は各国によって様々であり、真に国境を越えた権利の迅速かつ適正な実現を確保するためには、外国裁判所の判決がだされた時点から、実際に債権者の権利が実現されるまでの一連の手続を外国判決の執行の問題としてとらえ、本制度を体系的に整備していく必要がある。このような観点から、外国判決主文において、わが国では認められていない執行(履行確保)の方法が記載されている場合、すなわち主文で記載されている給付命令の内容がそのままの形ではわが国では制度上実現できない場合、執行判決裁判所としては、どこまでそれを補足し、あるいは修正し、わが国における強制執行手続に適応させることができるかという、執行判決請求訴訟における裁判所の権限の問題について、裁判例や学説の整理・検討を行った。 さらに、本研究課題に関する理論を検討していく上で不可欠な国際条約の作成作業における議論を整理することにより、国境を越えた権利の実現のための制度を構築する上で今後生じうる問題、検討しなければならない問題が何か、またそれらへの対処方法等について、わが国における解釈論との比較考察を行った。
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