協同組合法研究に際しては、研究が進んでいる資本会社との接点を探ることが不可欠であると考えている。このような考え方に基づき、資本会社と協同組合の接点であり、わが国でも事実上行われてきた「協同組合から資本会社への組織変更」について考察した。 「中小企業団体の組織に関する法律」の平成11年改正によって、事業協同組合・企業組合の株式会社・有限会社への組織変更に関する規定が新設された。新設に至る経過や新設後に実際界で如何なる対応がなされているのかについて知るべく資料を収集して分析した。新設前になされてきた事実上の組織変更では、一方では既存の協同組合は最終的には解散し、他方では資本会社が新たに設立されるため両者の間に法人格の同一性がない。そのため事業の遂行に不都合があるという点は、資本会社の組織変更について論じられている問題点と共通する。もう一段掘り下げると、協同組合は資本会社になぜ組織変更するのかが問題になる。この点について考察するためにアメリカやドイツでの議論から示唆を得た。両国では組織変更後も、あるいは設立当初から資本会社の法形式を採用しながら、協同組合的な運営を試みようとする場合もある。あらゆる種類の協同組合の設立を柔軟になしうる法制を有する法域でも、資本会社の法形式が敢えて選択される場合も少なからずあるという。その理由は、協同組合の特質として各国法制に取り入れられている議決権配分や資金調達の方法に求めることができると考える。
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