法律関係の一方当事者が他方当事者の利益を擁護すべき義務について、情報格差のある当事者間における一方の他方に対する情報提供の問題を中心に研究を行った。 具体的には、第一に、義務者と権利者という利益対立当事者間においても、義務者の権利者に対する情報提供が義務づけられる理論的な根拠は何か、権利者の情報取得利益と義務者の秘密保持利益は、どのように衡量されるべきであるのか、情報提供義務違反に対して、権利者に与えられる救済は、どのようなものであるべきかといった問題について、日本法とドイツ法を対象に研究を行った。第二に、一方による他方の利益擁護が本質であるような契約関係(委任契約)における、当事者間の適切な情報流通の規律は、どのようなものかという問題についても研究を行った。これについては、委任契約における受任者の負う忠実義務の内容として、あるいは、忠実義務解除の要件として、受任者は委任者に対して、どのような情報を、どのようなタイミングで提供すべきであるかといった問題を中心に検討した。 前者については、かねてより連載中であった「ドイツ法における報告義務と顛末報告義務-他人の事務を処理する者の事後的情報提供義務の手がかりを求めて-」と題する論文を、完結させた。 後者については、関西信託研究会において、「委任契約における受任者の委任者に対する忠実義務」と題する研究報告を行った。さらに、信託契約の成立と倒産隔離効についての、最高裁判決の判例研究論文を執筆・公表した(後掲11.研究発表[雑誌論文]参照)。
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