研究概要 |
本研究の目的は、債権流動化にあたり,近時議論が活発化されている、日本民法第466条の債権譲渡禁止特約規定の改正論に対して、その母法を有するドイツの例を参照し、特に,売掛金債権譲渡・ファクタリング契約に生じる法的問題について、法的な観点からだけでなく、社会的・政策的な観点からも考慮し,アメリカ法をも視野に入れた総合的な研究を行い、日本法に有用な示唆を汲み取ることである。 平成14年度は,主として次の事項に関して検討を行い一定の成果を得ることができた。 最初に,我が国において債権譲渡禁止特約が債権流動化にどのような制約を与えてえているかを検討した。まず大審院時代から現在に至るまで,債権譲渡禁止特約が問題となった判例を整理,分析し,近時,特に問題となっているのは,債権譲渡禁止特約のある売掛金債権,請負代金債権の譲渡をめぐる問題であることがわかり,これをふまえ,債権の譲渡性の意義を再確認し,学説・政府の議論の動向,譲渡禁止の利益と第三者保護との調整をいかに図るべきかをまとめることができた。これについて,学術雑誌「社学研論集」にて発表する予定である。 次に,ドイツにおいてドイツ民法の債権譲渡禁止特約規定から生じる法的問題を整理し、実際の金融機関のファクタリング取引の統計を作成し,債権譲渡禁止特約規定がファクタリング契約に及ぼす影響を考察した。ドイツではこれらの問題に対応するために1994年商法を改正しており,債権譲渡禁止特約規定の終焉と商法改正動向との関係を検討することができた。これについて,学術雑誌「ソシオサイエンス」に投稿準備中である。 また,これまでの研究と併せて,債権・資産流動化が進む米国が高齢社会を迎え直面している新たな問題について分析し,我が国の政策論に対して一定の示唆を汲み取ることもできた。3月にはドイツにて資料収集・視察・研究者・実務家への調査を行い,この成果もふまえた上で新たな見解を論文としてとしてまとめる予定である。
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