伝統的に法的独占が認められてきたネットワーク産業について、近年、新規参入を促進する等の競争原理の導入が進められてきている。これらの事業分野においては、従来独占的地位を認められていた事業者が、ネットワーク等の不可欠施設を有しており、新規競争者は、自己の施設を構築することが不可能ないしは期待し得ない場合には、当該既存のネットワークの利用に依存せざるえなくなる。したがって、かかる事業分野に競争を導入するためには、新規競争者等に対してネットワークへのアクセスを確保することが重要になる。これは、我が国のみならず、国際的にも重要な課題であり、検討の手がかりとして、EC独占禁止法、ドイツ競争制限防止法を取り上げている。 EC独占禁止法では、かかるネットワークへのアクセス拒否としての濫用行為の存否が争点となったケースが、幾つか見られる。ここでは、市場支配的地位が不可欠施設の所有と密接に結びついて認定されている。また、EC独占禁止法においては、不可欠施設として、必ずしも従来法的に独占が認められてきた分野に限らず、知的財産権等も不可欠施設に該当するか否かが争われており、不可欠施設として捉えうる範囲について、今後の展開に着目される。ドイツでは、かかるネットワークへの正当な事由なきアクセス拒否を濫用行為とする規定が、競争制限防止法に設けられている。この規定は、電力事業等の従来独占が認められてきた分野に主に適用されている。また、市場支配的地位の認定は、EC独占禁止法と差異はない。ここでのもっとも重要な問題は、どのような場合に、不可欠施設利用拒否の正当事由が認められるかである。原則として、当事者間の利益衡量することになる。もっとも、この場合、有力な判例・学説によれば、市場支配的地位にある事業者の所有する共同利用を原則としており、その利用拒否が正当化されるのが例外とされていることは、注目に値する。また、不可欠施設へのアクセス拒否に対する規制と関係して、料金規制が一定の役割を果たすことになる。さらに、この点を次の課題としている。
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