不可欠施設のアクセス拒否の問題を出がかりにして、市場支配的地位の濫用規制の在り方を明らかにすることを試みている。その手法としては、市場支配的地位にある事業者に対する包括的規定だけでなく不可欠施設に対する一定の規制を行っているドイツ及びヨーロッパを比較の検討の対象としている。 まず、不可欠施設のアクセス拒否に関する規定であるドイツ競争制限防止法19条4項4号の規定の内容を整理し、その上で、判例の分析を行った。さらに、このアクセスを確保する観点からは、適切なアクセス料金が形成されることが決定的であると言え、ドイツにおいていかなる規制が行われているかに焦点を絞った。ドイツ法では、事業者に対する価格設定に係る濫用行為を規制する規定がある。もっとも、いかなる価格形成を濫用行為とするかについては、従来ドイツにおいても一義的に理解されているわけではなかったが、ここで、価格濫用規制の理論を整理し、不可欠施設利用のアクセス料金に係る判例等の検討を行った。とりわけ、電力エネルギー分野を中心にアクセス利用の料金の適否が争点となっているケースが見られることから、独占禁止法にかかる規定を設けて、不可欠施設の開放を進め、競争を導入していく原則を明らかにしていくことは有効かつ競秩序維持法制として必要であると考えられる。
|