2003年度は、主に、資料収集とイギリスにおける答弁指示審判(Plea and Directions Hearimg、以下PDHと略す)の研究に従事した。資料収集においては、日本から取り寄せられる文献をイギリスを中心に収集するとともに、日本における刑事裁判の準備手続に関する議論を分析するための論文を収集するように努めた。また、裁判員制度に関わる研究会や学会に積極的に参加した。年度末には、イギリス(イングランド)に渡り、現地にてPDHに関する調査を1週間ほどの日程にて行った。まず、ロンドン中心部にある王立裁判所を傍聴し、PDHの審理状況を観察するとともに、PDHと証拠開示の研究で著名な研究者と面会し、具体的な研究上のアドバイスやPDHに関する知見を得た。さらに、ロンドン郊外にあるスネアーブルック王立裁判所にて、判事に面会し、PDHの審理に関する実務についてインタビューを試みた。さらには、同裁判所にて、別の判事が審理するPDHに裁判官席の横にて傍聴し、10ケースほどの審理を観察することができた。同裁判所においては、PDHに関する実務上の資料や、PDHを含めた裁判官のケースマネージメントについて調査することもできた。一方で、イングランドで近年設立された公設弁護事務所を尋ね、ソリシターから弁護士実務からのPDHについてもインタビューすることができた。引き続き、次年度はアメリカ合衆国の手続を調査し、具体的な研究論文をも分析しながら、刑事裁判の準備手続の在り方、性格等についての研究を公表したいと考えている。
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