1.本研究は、付添人や民間ボランティア、自助グループなどの「新しい担い手」が少年司法に関与する可能性を視野に入れ、非行予防、観護措置、審判、矯正・保護の各段階における「杜会的援助」を通した「社会との繋がり」を確保するための措置のあり方を明らかにすることを目的としている。 2.この研究目的のもと、本年度は、歴史的展開の分析研究に従事するとともに、観護措置(未決勾留)、審判段階に関する統計分析と実態調査を推進することを計画していた。 3.本年度において実際に従事した作業は、(1)ドイツにおける社会的援助の歴史的研究、(2)ドイツ少年司法の社会的援助に関する実態調査、(3)日本における付添人活動の分析、である。「社会的援助」のあり方を性格を論じるには、成人を対象とする刑事司法制度をも視野に入れる必要がある。「研究発表」に掲げた論稿は、(1)の研究作業の過程において明らかとなった社会的援助とも関わりの深い「再社会化思想」をめぐる昨今の議論状況をまとめたものである。(2)については、9月にドイツにおいて、少年司法従事者からの聞き取り調査を行った。調査にはなお蓄積が必要であり、成果を公表するにまでは至っていない。(3)の成果については、2003年1月26日に開催された日本刑法学会関西部会における報告「付添人の援助を受ける権利の公的保障」として結実した。本報告に関しては、来年度中に論説として公表する予定である。
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