本年度の研究計画に従い、まず、各国別のケーススタディを進めた。その際、基底になるのは、やはりフランスのケースである。昨年度、研究計画調書の提出後に上梓された、拙著『戦後フランス政治の実験第四共和制と「組織政党」1944-52年』(東京大学出版会、2002年3月)は、本研究の出発点となる礎石であるが、その延長線上に、同書で扱われなかった第四共和制末期の急進社会党について、同じ枠組みを用いて党組織と連合政治の交錯に関する分析を行い、フランス語で発表した。その後、この歴史的ケースに直接対比可能な事例として、現代フランスの左翼連合内部のダイナミクスについて研究を進めた。その成果の一部は、既に2002年の大統領選挙・下院総選挙の結果分析の形を取って公表された。連合政治の負荷が、共産党、緑の党の党組織の衰退、下部組織の叛乱という形で如実に現われたことを示しえたのは大きな成果であった。以上の点については、現地調査で内部資料の収集に努めると同時に、来日した専門家との研究会・討議からも大きな知見を得た。 同時に、日本や他の西ヨーロッパ諸国の事例分析も進めた。ドイツ、北欧などの歴史的事例は主に文献のサーベイに依ったが、ベルギー、オランダ、イタリア、日本などの現代政治の事例については、国内の専門家との研究会・討議からも大きな知見を得た。これらを基盤に、各国毎の政党組織の特徴を、連合政治への負荷への対応のパタンに従って類型化し、これに定量的な基礎付けを与える作業を進めた。(618字)
|