昨年度の新史料の発見によって、研究は当初予想することができなかった方向へと進んだ。そこで、本年度は、「情報」という観点から、より網羅的な史料収集活動を行った。具体的には、米国立公文書館、および米国家安全保障局史料館でのリサーチである。とりわけ後者の史料館は利用者が少ない上、情報関係史料が豊富にあるため、本研究にとって欠かすことのできない史料を多数入手することができた。国内では、情報公開法を利用した史料収集作業を行った。その結果、外務省から戦前期における日本の暗号解読の実態を綴った報告書が見つかった。このように、史料面からは大変有意義な一年であったが、膨大な量であるため、まだ完全には精査できていないのが現状である。最終的には、1930年代において暗号解読によってもたらされた情報が日米両国の政策決定にどのような影響を与えたのかを解明したいと考える。その上で、ブラック・チェンバーが閉鎖され、その代わりに陸軍省が中心となってMI-8が立ち上げられたフーバー政権期は一つの重要な鍵となる。 その他の研究実績としては、5月の日本アメリカ学会、6月の米国外交史学会(SHAFR)、そして9月の南カリフォルニア大学(ジャーパン・スタディーズ・セミナー)でそれぞれ報告を行った。特に米国では、本研究に対する関心は極めて高く、何人かの編集者から論文投稿の依頼を受けた。英文での活字公表は重要であると考えているので、それを来年度の目標にしたい。 最後に、本研究は来年が最終年度となるが、同年度中に単著として研究成果を公表したいと考える(出版社はすでに確定済みである)。
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