平成14年度の研究目的は、文献資料を精読し、主として研究状況を整理することにある。以下は、その成果である。 (1)江蘇省農村地域の村民自治の研究状況と動向について 本年度は、1990年以降注目されつつある村民自治を、政治社会学の方法論に示唆を得ながら、現実の農村社会の政治社会的文脈に内在して位置付け直すことを試みた。とくに、王濾寧、張厚安・徐勇をはじめとする華中師範大学農村問題研究センターといった中国国内の研究動向を整理しながら、近年の村務・財務公開と村民委員会直接選挙の動向を事例として村民自治にまつわる問題点を整理した。 ⇒第42回アジア政経学会西日本部会大会・中国部会I(2002年6月29日)で報告要旨として提出。 (2)江蘇省農村地域における地域権力構造の変化について 村民自治を通した農村基層政権改革を行う第一の政治社会の要因として、改革・開放期に起こった農村工業化に伴う社会変動にあることが考えられている。そこで、社会変動と農村基層政権との連関を流動人口問題の顕在化と小城鎮建設として捉え、地域権力構造の変容の端緒を探った。 ⇒『北東アジア研究』第4号(2002年10月)に掲載。 (3)海外でのレビュー・ヒアリングの成果について 本年は、2002年8月29日〜9月12日にかけて、上海市・江蘇省における村民自治に関するヒアリング調査・資料収集を行った。とくに朱通華教授(南京師範大学江蘇城郷発展研究院長)をはじめとした研究者にレビュー・インタビューを行った。江蘇省農村地域の研究は、経済・社会発展に関する研究が進んでいるのと対照的に、村民自治の研究はその蓄積が少ないことが明らかとなった。 ⇒その一部を島根県立大学北東アジア地域研究センターレポートとして『山陰中央新報』(2002年12月5日)に掲載。 ⇒以上の研究報告は、『メディアセンター年報』No.3(2003年)に掲載される予定である。
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