本研究は、16世紀スペインのインディアス問題を詳細に考察することを通じ、国際的側面からみた近代政治秩序の形成過程を描き出す試みである。本年度は、本研究の二つの目的--インディアス問題の全体像を体系的に提示すること、その意義を文明論の文脈で明らかにすること--のうち、後者を達成した。具体的には、近年注目されはじめている政治人類学の成果をも批判的に摂取しながら、古典古代から現代に至る文明概念の系譜を整理し、インディアス問題の思想史的位置と現代的意義を明らかにした。 作業の遂行にあたっては、貴重資料が多いため、所属研究機関を通じてイェール、カンザス、バルセロナといった国外の大学図書館、および京都、英知、愛知県立といった国内の大学図書館から原典と先行研究を収集し、その分析結果を公募・レフェリー制の学会誌論文(別記)としてまとめ、公刊した。また、スペインに出張して、国立マドリード大学政治社会学部および国立グラナダ大学歴史学部の専門家たちの前で研究成果を口頭報告し、意見交換を行う機会を得た。さらに、これらの研究活動をふまえ、その総括となる博士論文Los asuntos de Indias y el pensamiento politico moderno : losconceptos de civilizacion y barbarie en el nuevo orden mundial (1492-1560)を完成させて最終の外国語校閲に付し、国立マドリード大学政治社会学部社会政治思想史学科に提出した。来年度は、口頭発表や出版の形でその成果を公にし、諸研究者のさらなる批判をあおぐ予定である。
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