本研究は、16世紀スペインのインディアス問題を詳細に考察することを通じ、国際的側面からみた近代政治秩序の形成過程を描き出す試みである。前年度までに、すでに本研究の二つの目的--インディアス問題の全体像を体系的に提示すること、その意義を文明論の文脈で明らかにすること--を達成し、博士論文「インディアス問題と近代政治思想--新世界秩序における『文明』と『野蛮』の概念(1492-1560)」としてまとめていたので、本年度は、同論文をもとにした単著をスペインで出版することにより、本研究を完結させた。 作業の遂行にあたっては、諸研究者からのコメントをもとに同論文を修正する過程で、さらなる文献調査を行う必要があったため、所属機関を通じて佛教大学、金沢大学、英知大学等から収集した原典と先行研究を分析した。同時に、青山学院大学、東京大学、清泉女子大学に赴き、所蔵図書の調査、読解、解釈を行った。そして、これらをふまえて原稿を完成させ、マドリードの出版社から単著(別記)公刊の運びとなった。 また、本邦における成果発表としては、本研究の第二の目的である文明概念の考察の補完として、近年注目されはじめている政治人類学の成果を批判的に取り入れた雑誌論文(別記)を執筆した。これは、現在共同執筆者と原稿調整段階に入っている共著『文明と政治』の一部を構成することが見込まれている。
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