本年度は、台湾総統選挙の年であったということもあって、自己の研究課題であるクリントン・ブッシュ政権期と同時に、今日の米中台関係に関しても研究活動を行った。 第一に、日本国際問題研究所の機関紙『国際問題』2004年2月号に「9・11後の米中台関係」と題する論文を発表した。1970年代後半に掲載された「台湾関係法体制」は、米国が台湾の安全保障をバック・アップすることによって中台の現状維持を促したが、中国の経済成長と民進党の台湾での政権獲得によって、新しい段階に突入しつつあることを指摘した。陳水扁政権の「四不一没有」から4年、台湾の政党構成は大幅に変化し、2004年3月の総統選挙は、台湾のみならず、中国・日本・米国等近隣諸国にとっても重要な意義を有することを明らかにした。 第二に、日本国際政治学会の機関紙『国際政治』に「同盟の『拡大』と『多元化』」と題する論文を発表した。アジア太平洋地域の国際関係を論じる際に日米同盟関係は欠かすことができない。実際、1996年の日米安保共同宣言以来、日米関係はその機能の多元化と、適用範囲の拡大に関して議論を進めてきた。この米国の同盟政策は、台湾の安全保障を考える際にも重要である。即ち、直接米軍が駐留しない台湾にとって、日米同盟がどの程度の前方展開能力を有するのかが鍵となるからである。その意味でも、日米関係と米台関係とは切り離すことができない。 そして第三に、実際の米中台関係を観察する意味から、台湾の中央研究院に訪問研究員として3月滞在したことである。時期はちょうど台湾総統選挙のときであっただけに、今日の米国の台湾政策に関するインタビューを行うことができた。その成果は来年度、日本台湾学会の学会発表において行う予定である。
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