本研究は現代日本の政治参加の変動を分析することを目的とする。本調査の項目は(1)政治参加の構造、(2)政治参加と政治的動員、(3)利益誘導型政治の否定と自己決定システムの確立、の3つであり、これまでの日本人の政治参加が徐々に構造変動を起こしていることを検証するものである。 調査地点は、愛知県内の4ヶ所、名古屋市(中村区、東区、昭和区、千種区)、豊橋市、半田市、藤岡町から各600サンプル、合計2400サンプルを無作為抽出した。調査は11月下旬から調査票を対象者に郵送し、返送してもらう郵送調査の方法を用いた。回収率が心配されたが、1026票回収できた。 調査結果の概要を次に記す。 従来、日本人の政治参加は選挙による投票だけが突出して大きかったが、現在では異なる参加形態も増加してきている。特に、市民運動、住民運動、ボランティアなどの形態が、その枠組みを融合させつつ増加傾向にある。しかし、ボランティアなどの社会参加が明確に政治参加の範疇に含まれる事ができるかどうかは、断言できない。 有権者の政治的動員は、縮小傾向にあると思われるが、それが既存の政党政治といかなる関係にあるのかは、更なる調査を必要とする。 55年体制の象徴である利益誘導型政治は完全に否定されている訳ではない。まだ、多くの地域では、それを望む声もある。詳細な分析は現在行っている。 また、この調査と平行しておこなってきた研究として、1998年の選挙制度改革(「投票時間の延長」、「不在者投票制度事由の緩和」、「不在投票時間の延長」の3項目である。)が投票率にいかなる影響を与えたのかを実証的に分析し、これからどのように変化するかをシミュレートした。分析結果は、制度改革が一時的には投票率上昇に貢献したと思われるが、それは、決して恒常的に続くことではないと考えられる。
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