本研究は、現代日本の政治参加の変動を分析することを目的とする。標本調査を愛知県内で平成14年、15年の2回に分けて行った。主な調査項目は(1)政治参加の構造、(2)政治参加と政治的動員、(3)利益誘導型政治の否定と自己決定システムの確立、(4)アドボカシーとしてのボランタリーセクター、の4つであり、これまでの日本人の政治参加が徐々に構造変動を起こしていることを検証するものである。 平成14年の調査地点は、愛知県内の4ヶ所、名古屋市(中村区、東区、昭和区、千種区)、豊橋市、半田市、藤岡町から各600サンプル、合計2400サンプルを無作為抽出した。調査は11月下旬から調査票を対象者に郵送し、返送してもらう郵送調査の方法を用いた。回収率が心配されたが、1026票回収できた。 平成15年の調査は愛知県内の3ヶ所、名古屋市(中区、東区、昭和区、千種区)、豊田市、江南市から各400サンプル、合計1200サンプルを無作為抽出した。 調査結果の概要を次に記す。 平成15年の調査は、主にボランタリーセクターに含まれる団体の活動がアドボカシーとしての役割を如何に果たしているのかを検証するものであった。サーベイデータを共分散構造分析により詳細に検討すると、幾つかの特徴的なことがわかった。以下、その特徴を記す。 (1)ボランタリーセクターの活動は、参加する市民の意識から見ると3つの次元を有する。第一に社会参加・貢献、第二に自己充足、第三に政治的影響力、である。 (2)ボランタリーセクターの活動は、これまでの市民・住民運動と似ているが、独自性を強く持つ。なぜなら、これまでの市民・住民運動(新しい社会運動を含む)の多くは、政治・行政との対抗関係にあった。しかし、ボランタリーセクターの活動は、コラボレーションといわれるように、政治・行政との信頼関係を含む。 今回の調査からは、以上この二点がデータから検証された。この結果が示唆することは、ボランタリーセクターの存在がソーシャルキャピタルの存在を可能にしていることである。
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