研究概要 |
環境税を導入して賦課方式年金の財源として活用し,かつ社会保障税減税を行うことで税収を一定に保つ「税収中立な環境税改革」が経済や環境にもたらす影響について,理論モデルを用いて分析した.具体的には,税収中立な環境税改革を実施することで,環境以外の要素から生じる効用(非環境効用,本分析では消費からの効用)および環境水準の同時改善(二重の配当)を達成する改革のあり方および経済的な条件について,世代重複モデルを用いて検討した.分析の結果,次のことが明らかになった. 1.税収中立な環境税改革が実施可能となる社会保障税率の上限が存在する.環境税導入前に社会保障税率がこの上限を上回っていると,税収中立な改革は不可能となる. 2.資本分配率が0.2未満のとき,税収中立な環境税改革のもとで,二重の配当を達成することが可能である. これまでの環境税改革に関する研究は,(i)家計の予算制約に影響を与えない政府支出,あるいは(ii)失業者への失業保険給付の財源,に環境税収入を充てた場合の効果に関する研究に重点が置かれてきた.一方,現実の環境税改革では,年金財源として環境税収を活用する政策が取られている(たとえばドイツ).本研究は,これまでほとんど行われてこなかった年金財源としての環境税活用の効果とその政策的な含意を明らかにしたものである. この研究結果は"Environmental tax-financed social security tax cuts and the double dividend"というタイトルの論文にまとめて学術雑誌FinanzArchivに投稿し,採択が決定した.
|