研究概要 |
本年はまだ研究期間の2年目でありながら、これまでの研究成果が査読付英文ジャーナルに受理されるなど、概ね順調であった。企業内の職場訓練や職場移動に蘭する論文が、Journal of Economic Behavior and Organization誌とLabour Economics誌に公刊されることになった。 日本では企業の解雇権を制限した判例法理は一種の社会規範とみなすことができる。その解雇規制に関する救済手段として、職部復帰と賠償金の二通りが考えられるが、その経済厚生に与える影響について分析し、賠償金による救済が復職による救済よりも社会的に望ましいことを明らかにした論文"Damages or Reinstatement : A Note on Remedies for Illegal Dismissal"を、ストックホルムで開催された欧州経済学会を始め、法と経済学会、労働経済学コンファレンスで発表した。 さらに労働法以外では、最近論争となっている企業内研究における発明(職務発明)は、企業と従業員のどちらに権利を与えるべきかという特許法(特に35条)の規定に関する問題を分析した論文"Who should Own Rights of Service Invention, Employees or Firms?"を、日本経済学会で発表した。青色発光ダイオードの権利をめぐる中村修二教授(カリフォルニア大学サンタバーバラ校)の裁判に象徴されるテーマでもあり、学会の聴衆の関心は極めて高かった。 また、賃金・評価システムが企業内で校正なものとして共有される必要性が指摘されて久しいが、その企業内の規範性と従業員の動機付けについての研究を手がけ始め、来年度に継続中である。
|