研究概要 |
去年度は日米の石油産業、特に卸・小売りガソリン市場のデータを利用する事によって、契約形態の違いが経済活動にどのように影響するかを分析した(この研究は成蹊大学経済学部の井上氏との共同論文となり、現在投稿中)。米国を扱ったBorenstein and Shard (Rand Journal of Economics,1996)の研究では、需要の変化に対し小売企業のマージンがprocyclicalな動きをする事が示された。我々の論文では、むしろ日本ではcountercyclicalな動きとなる事を示した。 今年度は、「企業間契約等における日米の構造の違いによって、外性的なショック(需要、原油価格の変化等)が経済にどのような影響を与えるか」という視点から、前記論文を補完する研究を進めた。 Borenstein、Cameron, and Gilbert(Quarterly Journal of Economics,1997)によると、米国市場における原油価格の変化の効果は、その方向(上昇か減少か)によって影響のasymmetryが存在する。即ち、原油価格が上がる場合はそれに会わせて卸・小売価格も連動するものの、下がる場合の価格の反応は(相対的に)鈍いという事である(この点は、他の市場を扱ったPeltzman(Journal of Political Economy,2000)によっても「一般的に観察される現象である」と指摘されている)。 井上氏との共同論文「Do Prices Rise Faster than They Fall?」において、日本市場においては効果がむしろ逆である事を示した。すなわち、「原油価格の減少」の方が「上昇」よりも相対的に早い反応を示す。これは、日米の石油産業における(企業間契約形態を含む)構造の差に起因していると考えられる。完成稿をrefereed journalへ投稿する予定である。
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