失業者(無業者)についても分析できるデータを使用して不平等の計測を試みた。具体的には1)『全国消費実態調査』(総務省統計局)の1984年、1989年、1994年、1999年調査の個票を入手し、無業者も含めたサンプルについて不平等を計測し、時間的変遷を考察した。 2)上記(1)において、課税前所得と課税後(可処分)所得、消費レベルでの不平等度をそれぞれ計算し、それらを比較することで再配分効果を考察した。『全国消費実態調査』は勤労世帯以外も含めた全世帯の年収について、課税後(可処分)所得を調査していない。そこで、課税前所得と労働形態、家計形態から各種控除、税額を推計し求めた。 3)『国民生活基礎調査』(厚生労働省)の1986年、1989年、1992年、1995年、1998年の個票を入手し、無業者も含めたサンプルについて不平等を計測し、時間的変遷を考察した。 4)上記(2)において、課税前所得と可処分所得、消費レベルでの不平等度をそれぞれ計算し、それらを比較することで再配分効果を考察した。 5)『全国消費実態調査』による結果(1)(2)と『国民生活基礎調査』による結果(3)(4)を比較した。 分析の結果、可処分所得で見れば不平等度は大きく拡大していないことが分かった。興味深いことに、消費で見るとそれぞれの統計でインプリケーションが大きく異なる。『全国消費実態調査』によれば、所得と同様に消費でも不平等は拡大していないが、『国民生活基礎調査』によれば拡大傾向が観察される。どちらの統計も日本では知名度が高い統計として、様々な分析に頻繁に用いられている。この発見は学術研究にも政策評価にも重要な基礎事実を示している。 現在、何が両者の差をもたらしているのかについて分析中である。また、作成した不平等の指標を用いて失業と不平等の関係についても分析を進めている。
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