(昨年度までに得ていた結果:『全国消費実態調査』と『国民生活基礎調査』という日本で最も知名度が高い2つの社会統計を用いて所得の不平等を計測した結果、両者で不平等拡大傾向が大きく異なることが分かった。どちらを使うかで政策的インプリケーションが異なってしまうという事実は学術的にも政策的にも大変重要な発見であった。) 上記結果について、何が両者の差をもたらしているかを分析してきた。調査対象の分布や異常値の存在を調べてきたが差を説明する要因は発見できていない。現時点では、『統計によって不平等の拡大に関するインプリケーションは異なり(『全国消費実態調査』では不平等は拡大していない)、議論の際には何を基にしているか明示する必要があること』を挙げるに留めている(なお分析中である)。 また、失業と不平等の関係を分析するため国内外の研究成果をサーベイした。既存研究は、失業や失業期間が資産形成に与える影響、失業や失業期間が職探しのインセンティブに与える(これにより勤労所得に与える)影響、これらと失業保険政策との関係を分析するものに大きく分けられる。このうち3点目が政策的にも重要だと考え、日本の失業給付政策が与えた影響として分析し始めた。とくに、平成13年度の雇用保険改革(失業給付制度改正)について政策効果を検討する。現在、計量分析のために必要なデータを入力し分析の準備を進めている(平成15年度の改正についても行いたいが、今のところ分析に必要なデータが存在しない)。 このように、今年度は成果物として雑誌等に公表するには至らなかったが、分析結果は得ており、来年度には学会発表し論文として雑誌に公表したいと考えている。
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