今年度は内生成長モデルのうち、消費財のバラエティーが拡大するモデルにおいて貨幣の限界効用が高止まりする不況モデルの枠組みで、このモデルのもう線形性の緩和を当初研究課題とした。線形性の緩和は、昨年度単純な小国モデルを想定し、閉鎖経済である場合と貿易をおこない、開放経済に以降した場合の経済成長の違いを考えた際に課題となったものである。つまり、モデルの線形性により、利子率が結局は線形的に国内の条件により決まり、国際利子率との乖離が生じたとしても、為替レートの変化率が調整をおこない、国内利子率は変更されず、成長経路にのるか、不況定常状態にのるかを左右する、貨幣と消費における効用の限界代替率は変化しないため開放しても経済成長に差が生じないのである。しかしながら、消費財の種類が拡張し、かつ貨幣の限界効用がβで高止まりするモデルにおいて、定常均衡が存在するには、効用関数の線形性がないと困難なことなど、このモデルを分析可能なものにとどめるには線形性を保うべきであるという結果が得られた。そこで、線形性の緩和より、生産面など、他の条件の設定により、貿易の効果が得られるようにすることを課題とした。一番直接的なのは、研究開発費が開放することにより左右される場合である。この場合には、成長率の変化のみならず、経路の変更があり得る。しかしながら、この仮定は開発費の変化と貿易との関連が説明できないなど問題が多いため、以後における改良が求められる。その他、今年度は出産にともなう休暇のため研究期間が少なく、検証することができなかったものの、消費財の原材料を輸入品とする、もしくは、他国の消費財のバラエティー群を自国と異なるものと想定することによって、貿易開放による成長経路の影響が与えられると予想される。
|