研究概要 |
マクロ経済成長モデルに新しい都市・地域経済モデルの成果を取り入れ,公共投資の規模や地域間配分を評価するための理論的枠組みの構築を試みた.特に,どの地域に都市化が進むのかといった都市化のパターン,および,どの程度まで都市化が進むのかといった都市化の程度が,それぞれどのように決定されるのか,そして,どのような都市化のパターンや都市化の程度が望ましいのかについて,より厳密な分析を試みた. いずれの地域が都市となるについては,ある地域にどの程度まで都市化が進展しているかという歴史的要因だけでなく,家計の選好が集積のメリットが大きい産業のアウトプットに対して大きい半面,家計が混雑をそれほど気に留めないような場合には,都市化のパターンについての将来期待にも依存することを明らかにした.また,技術的外部効果が地域を越えて波及するような場合ほど,将来期待が都市化のパターンの決定に重要となることが示された. また,輸送インフラ全体の規模と地域間配分も,都市化のパターンと都市化の程度に影響を及ぼす.都市化の初期の段階で,輸送インフラを急速に整備させたり,面積の狭い方の地域にインフラ配分の重点を置いたりすると,面積の狭い方の地域において都市化が進むこと,そうした都市化のパターンが定着してしまうと,さらなるインフラ整備は,成長率の低下を招くことが示された. 以上から,輸送インフラは,はじめのうちは,面積の広い方の地域に重点を置いて整備し,そこで都市化が定着してくると,配分の重点を都市に残しつつも,地方のインフラも充実させ,経済全体で見たインフラ水準を充実したものにしていくのが望ましいことが分かった.
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