研究概要 |
"Threshold nonlinearities and asymmetric endogenous business cycles"と題した石田潤一郎氏(信州大学経済学部)との共同論文(forthcoming in Journal of Economic Behavior and Organization)では,知識の漏洩(knowledge spillovers)と建設時間制約(time-to-build restriction)という想定下での内生的景気循環モデルを提示した.このモデルは,各企業の利得が知識の総計量に依存し(知識漏洩),かつ,技術の改定には時間がかかる(建設時間制約)という2つの仮定で特徴付けられる.この論文は,このような仮定のもとで経済がひとつの不連続性(閾値)を有する区分線形の差分方程式で記述され,任意の周期の周期的循環が発生することを示した.このモデルは,国ごとに異なる景気循環の非対称性を説明するのみならず,TAR過程などの閾値(threshold)をもつ時系列モデルのひとつの理論的な基礎を与えていると考えられる.この論文のひとつの発展として,石田氏とともに執筆した"Heterogeneity-induced chaos : an example"という論文(岡山大学経済学部ディスカッションペーパー,投稿中)において,上記のモデルにごく僅かな企業の生産性に関する異質性を導入することで,周期変動のみならずカオス的(非周期的)変動が生じることが示されている.
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