今年度の研究は次の3部分からなる。 ●新経済地理の手法による研究 1.新経済地理の分析に使われるdynamicsの安定性を分析し、その必要十分条件を得た。研究成果は国際学術誌Journal of Regional Scienceに採用された。 2.2地域の核・周辺モデルに農業部門を明確に導入し、解析解を求めることに成功した。その結果、農業部門は運送コストの逓減により、地域工業経済活動が「分散⇒集中⇒再分散」の変化パタンをとることが分かった。研究成果は国際学術誌Journal of Development Economicsに採用された。 3.以上のモデルにさらに多工業部門を導入し、その経済活動を分析した。その結果、分散と再分散の違いが明らかになった。分散においては、各工業部門が2地域に均等に立地するが、再分散においては、高々1つの工業が両地域に立地するが、ほかの工業は別々の地域に集中する。この成果を纏めた論文Spatial economy with multi-manufacturing industriesは2004年2月にハワイで開催された学会Western Regional Science Associationの第43回年会で発表された際に、best paperに選ばれ、第9回のSpringer-Verlag賞を受賞した。 ●仲裁手順の研究:前年度の研究によって開発した仲裁手順AFOAは国際学術誌Mathematical Social Sciencesに掲載された。この手順をさらに分析した結果、必ずしも危険中立でない両紛争者が異なる情報を持つ場合においても、仲裁手順AFOAが現在知られている手順より優れていることが分かった。 ●コンフリクト解析のグラフモデル研究:政策均衡を提案し、その性質を調べた。特に現在使われている諸概念との関係を明らかにした。
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