経済理論では企業が他国の市場に参入するとき、その企業は輸出をするか、又、現地で生産するかの2つの選択技があると通常は仮定する。しかし、ここ数年、米国と欧州の日本の自動車市場へさらに参入するため新たな方法が選ばれている。それは現地の日本の自動車製造社との資本提携である。米国、欧州と日本の自動車製造社の間に資本提携、いわゆる持ち合い株式が急増した。たとえば、ルノーが日産自動車の大株主となり、事実上の経営者となった。結局、本来競争相手だった企業が今日、提携して生産の面、特に車のプラットフォーム(車体)を共通化する等で協力している。提携する理由として、自由化、技術進歩、規模の経済性を得るためなどがあげられるが、自動車市場に与えている実際の影響について実証的に検討することにより、資本提携が望ましいかどうかを判断したい。 この研究の目的は日本の自動車産業における外国企業との資本提携が企業の生産量、利益、製品差別化などの市場結果に与える影響を実証的に推定することである。そのために、Motta、Rowthorn、Reitman等の研究に基づいてモデルを作る。次に、このモデルを推定するため、日本の自動車製造社の1980年以降の約25年間のデータを収集した。 競争状況によって若干の違いはあるが、モデルを推定して、得た結果を簡単にまとめると次のようになる:一方的な資本提携の場合(一社が他社の株式の一部を取得する場合)、市場の製品差別化は減少する。それに対して、持ち合い株式の場合(両社がお互いに株式を取得する場合)には、市場の製品差別化は増加する。それによって、社会総余剰が変わってくるため、政策面でも考慮する必要性を示している。
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