平成14年度は、産業連関計算を利用した経済・環境構造指標を構築するための基礎的な研究として、はじめに、1.産業連関研究の国際的動向に目を向け、産業部門間の取引情報を表現する中間財取引表そのものを分析の対象として、産業構造の変動過程や産業技術の変革過程を把握するための分析方法を調査・整理した。そして、グラフ理論を活用することによって、質的な産業技術構造に接近する可能性と指標化の方向性を考察した。つぎに、2.環境分析用産業連関計算の新しい展開として、今日的なライフサイクルアセスメント(Life Cycle Assessment ; LCA)の観点から、結合生産過程、屑・副産物生産過程、および資源循環・リサイクル過程を把握するために、「三次元産業連関計算」、「シナリオレオンチェフ産業連関計算」、「ハイブリッド産業連関計算」、および「プロセス産業連関計算」等が新たに開発されており、その分析的特徴と研究動向を考察した。そして、未来型の電力生産システムの環境負荷計算のために、「シナリオレオンチェフ産業連関計算」を適用し、その分析手法を具体的に明らかにしている。最後に、3.技術移転による環境改善実験の効果を総合的にモデル計算するためには、オープン型産業連関計算をクローズド化した環境・経済モデルが必要であり、経済情報と環境・工学情報を接合する観点から、これまでに構築した中国の地域経済・環境・エネルギーデータベース、地域経済・環境モデルおよびシミュレーション計算の方法を再検討し、環境保全型の産業技術の導入が中国の経済・環境情況に与える影響をシミュレートしている。
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