研究概要 |
本年度の研究では,これまで考察の対象としてきたセミパラメトリックモデル,すなわちコピュラの族としてパラメトリックなものを特定し,周辺分布は任意とするモデルに関する研究を仕上げて論文を完成させた.推定する方法としてこれまでに検討してきた2つの方法-順位近似M-推定と最小距離推定-を求めるMATLABコードを書き,4つの良く知られた2次元コピュラの1パラメータ族から乱数を発生させて,モンテカルロ法による推定量の比較を行った.その結果,最小距離推定量は平均2乗誤差が多少大きいものの,広くパラメータの値に対してバイアスの小さい推定量となることがわかった.順位近似M-推定量もほぼ同等のパフォーマンスを示した.これらの結果については次年度にカナダの国際コンファレンスで発表予定である. また,本年度の後半から歪み変換(distortion transformation)によるリスク尺度や保険プレミアムの導出についての研究を開始した.これは現時点で盛んに研究が行われているホットトピックであるが,筆者が以前行っていた変換モデルの研究と非常に密接に関わっており,その結果を修正すれば保険数学やファイナンスへ適用できることが判明した.現在は1次元のリスクに関する研究であるが,この多次元への拡張がこれからの課題であり,そのためにはコピュラが重要な役割を果たすであろうと考えている.この話題について,3月一橋大学で行われたシンポジウムで講演した.また,得られた若干の結果をまとめた論文を現在執筆中である.
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