生活基盤型の社会資本整備について資本化仮説に基づいた分析を展開した。生活関連の社会資本は必ずしも生産に貢献しないので、その便益を測定するのは、困難であるという大きな問題点を抱えていた。本研究では、Urban Economicsの分野で用いられてきた資本化仮説を応用するBrucknerモデルを一般均衡モデルに拡張し、所得税や住民税になどの一般的な財源で社会資本を調達する場合にも適用できるように、モデルの改良をおこなった。そのモデルを用いて、研究期間中に3つの実証分析を展開した。 第1は、生活基盤型の社会資本整備を一つと捉え、都道府県のパネルデータを用いて、生活基盤型の公共投資の効率性について実証分析により明らかにした。分析の結果、3大都市圏において80年代を中心に生活基盤型の公共投資が過小であり、それ以外の地方では生活基盤型の公共投資が過大となっている。これについては2002年に日本経済学会秋季大会において学会発表を行った。これは、英文化しJJIE (Journal of Japanese and International Economics)に投稿中である。 第2に、生活基盤型の社会資本整備を機能別に分類した分析では、生活道路、都市計画、下水道の評価は高いという結果が得られた。なお、この研究は2002年に日本財政学会において学会発表を行った。さらに、これを加筆修正し、現在「生活経済学研究」に投稿中である。 第3に、国県道のような生産基盤型と町村道や街路などのような生活基盤型の社会資本の双方を含んでいる道路関連の社会資本に注目し、さらにストックとしての効率性に関して実証分析を展開した。実証分析の結果として、都市部では道路関連の社会資本が過小であると判断され、地方では比較的効率的な状態にあり、90年代後半以降は道路関連の社会資本が過大になっている。この研究は現在改訂中であり、学会誌等への投稿を検討している。
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