1.国内外での調査・・・国内学会(経済学・統計学関係学会)及び海外学会(Econometric Society主催学会)において、関連研究に関する調査や研究者との意見交換を行った。 2.先行研究の整理・・・理論研究について、特に時系列データに構造変化が発生しているとき、その存在を無視して種種の単位根検定を用いた場合に起こりうる問題について整理した。 3.理論研究1・・・時系列データが複数回の構造変化を持つとき、Dickey-Fuller検定を用いて単位根仮説検定を行った場合に引き起こされる問題について理論的研究を行なった。得られた結果は、真のデータ生成過程が定常過程または非定常過程のどちらであるかによって大きく異なる。データが定常過程に従っているときには検定のパワーの急激な低下(単位根帰無仮説の過小棄却)が起こることがあり、データが非定常過程に従っているときには検定に深刻なサイズの歪み(単位根帰無仮説の過剰棄却)が発生する可能性がある。また、モンテ・カルロ・シミュレーションにより、本結果が小標本においても概して成立していることを確認した。 4.理論研究2・・・Weighted Symmetric estimatorに基づいた単位根検定について、時系列データが複数回の構造変化を持つ場合でのパフォーマンスを検証した。分析の結果、Dickey-Fuller検定に比べて構造変化の多くの場合(ブレイクのパターン(レベルやスロープの変化)、ブレイクの位置・大きさ)に対して本検定は頑健であることが示された。ただし、構造変化の位置と大きさのいくつかの組み合わせに対しては、本検定において帰無仮説の過剰棄却が発生しうることも明らかとなった。さらに、モンテ・カルロ・シミュレーションを用いて小標本での挙動も検証した。 5.学会報告・・・3の研究成果について、日本経済学会秋季大会において報告を行った。 6.学術論文作成・・・3の研究成果は既に学術論文2編にまとめられている。また現在、4の研究成果について論文執筆中である。
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