研究概要 |
今年度は,アメリカ合衆国の福祉改革後に関する研究を中心に行い,日本の制度改革の動向について資料収集を行った。 アメリカ調査では,ウィスコンシン州,イリノイ州,ニューヨーク州を対象として,1996年福祉改革後の各州の対応とTANFプログラム(アメリカ版welfare-to-work政策)の実践・実行プロセスについて,資料収集と現地調査を行った。抜本的な改革で知られるウィスコンシン州では,公営と民営のジョブセンターを訪問し,ケースワークの方法,職業訓練プログラムの内容,人的資源の配置等,具体的で実践的な知見を得ることができた。穏健的なアプローチで知られるイリノイ州では,労働行政と福祉行政の一体化はなされていないものの,現金給付のタイムリミットや収入認定を柔軟化しつつ子どもの保育や教育プログラムに力をいれることによって,福祉受給者のwell-beingを確保していた。ニューヨーク州ではそれら両州とは異なり,福祉改革後5年のタイムリミットで多くの人々が現金給付をカットされていた。就労体験プログラムでは本格的な仕事に結びつかないといった反省を経て,州政府や市ではコミュニティカレッジや民間企業を巻き込んだ職業訓練プログラムの開発を試行錯誤していた。いずれの現地調査においても,連邦制度の枠内外における州独自の取り組みとTANFプログラム以外の税・社会保障プログラム(フードスタンプ,メディケイド,SSI,保育,EITC等)の重要性を再確認した。 日本の動向については,平成14年8月の児童扶養手当の改革,11月に成立した児童扶養手当法・母子寡婦福祉法等改正,平成15年1月から3月にかけて国で議論された母子家庭等施策に係る基本方針など,今年度より始動した日本版welfare-to-work政策の内容について資料を収集するとともに,先行して就労支援・子育て支援プログラムを実施している自治体の取り組みについて資料を収集した。
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